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炭酸水と次亜塩素酸ナトリウムを使った次亜塩素酸水の作り方 [生活お役立ち情報]


 新型コロナウィルス(COVID-19)への対応で外出や3密を避けるとともに、マスクや消毒剤などの衛生対策もされているかと思います。我が家では2020年春~夏に消毒用エタノールが入手困難だったため、代替品として炭酸水で微酸性~中性の次亜塩素酸水を自作して使っていました。

 この方法は個人の方法のため、積極的に推奨いたしません。作成方法が理解できない方もご遠慮ください。あくまでも、一般家庭での作成方法の参考としてご覧ください。他にも作製方法のサイトはありますが、設定根拠が少ないサイトもあって危険と感じたため、本記事では私が理解した根拠の計算などを後半に記載しています。

・抗コロナウィルスとしては、消毒用エタノールの方が安全性・安定性・保管条件で良いですので、入手可能な方はエタノールを最優先でご使用されることをお薦めします。
・食塩水を使った電解次亜水生成器なる製品もありますが、生成物にはかなり機器で差があると思います。試しに次の記事でどのような液体ができるかを簡易検証を行っていますので、ご興味ある方はご覧ください。
・実際にウィルスを用いた効果確認は実施していません。
・次亜塩素酸水とハイターなどの除菌漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)は違います!

≫ ハイターなどの除菌漂白剤として知られる次亜塩素酸ナトリウム水溶液はアルカリ性のため、皮膚や眼、口腔内、気道内表皮に触れると溶けたり、ただれたりします。希釈したとしても、人の手指消毒や空間噴霧、加湿器などへの使用は厳禁です!!

≫ ハイターなどの除菌漂白剤である次亜塩素酸ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム配合の製品も含む)も、適切に希釈するだけで汚物やモノの表面消毒には使用可能です。ただしアルカリ性のため、噴霧後の水拭きはした方が良いです。より簡単に作成可能なため、目的上それで十分な方はそちらを使われることが良いと考えます。厚生労働省が発表した作製方法のリンクも記載しておきます。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000645359.pdf

≫ 本ページで紹介している次亜塩素酸水は、一般的に入手可能な材料で、強アルカリである次亜塩素酸ナトリウム水溶液を弱酸性である炭酸(H2CO3)で中和し、pH6~7の微酸性~中性次亜塩素酸水を作成する手段の参考として記載しています。本ページに記載の通り、危険性があるため作成される方は自己責任にてお願いします。

≫ 作成後の次亜塩素酸水も塩素が含まれておりますため、小さなお子さんなどの手の届かないところに保管してください。また密閉空間での使用は避けてください。

【準備するもの】
o 漂白・消毒用次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩素酸ナトリウム以外の添加物(水酸化ナトリウム等)が入っていない製品ピューラックスなど)
o 未開栓の炭酸水(水と炭酸(二酸化炭素)以外の添加物が入っていない製品:ウィルキンソン、サンガリア 強炭酸水など)
 ※開栓すると炭酸濃度がすぐ落ちます。
o ボトル/ペットボトル
o スプレー容器
o pH試験紙
o 次亜塩素酸試験紙(高濃度用:共立理化学研日産化学工業

【作製方法】
6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ピューラックス)と炭酸水(ウィルキンソン)を用いた一例
※上記と異なる材料を用いた場合は量などを変える必要があります!

① [500 mg/L (ppm) (0.05%)次亜塩素酸水ストック溶液(500 mL)の作製]
 空きボトル/ペットボトルに水を250 mL程度入れ、6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ピューラックス)4.2 mLと、炭酸水(ウィルキンソン)125 mL(少し多めでも可)を加えて、混合する(炭酸水は放っておくと炭酸が抜けるので、開けたら早めに加える)。この分量でほぼpH 6前後(弱酸性)になります。

 ただ、炭酸濃度の異なるウィルキンソン以外の炭酸水や、開栓し炭酸が抜けた炭酸水を使った場合、十分に酸性化できていない可能性がありますため、原則pH試験紙で酸性であること(アルカリ性でないこと)を確認すべきと考えます。 ※アルカリ性の場合、酸性になるまで炭酸水を加える。
 その後、全量が500 mLとなるように水を加える(ピューラックスの120倍希釈液)。

 なお、作成した次亜塩素酸水は紫外線・高温で分解するため、ストック作成後は高温を避け、アルミホイルなどで包んで保存(もしくは暗所保存)する。ストック溶液の保管限界は、次亜塩素酸試験紙を使った結果からは、遮光下で3~4週間と思います(32日まで確認済:記事中盤に記載)。

② [目的に応じた希釈次亜塩素酸水の調整]
 目的に応じストック溶液をスプレーボトルに希釈する。希釈後は、次亜塩素酸試験紙で濃度を確認することを推奨します。紫外線・高温で分解が早くなるため、アルミホイルなどで包んで遮光保管する。こちらの各希釈液の使用期限も、遮光下で3週間程度と思います(記事中盤に記載)。
 また、金属の腐食作用があるため、金属製品への噴霧後は水拭きするのが望ましいです。

A) [250 mg/L (ppm) (0.025%)] ゴミ箱など汚れが多く付着したモノの消毒用途
 上記①で作成したストック溶液を水で2倍希釈。
 ※汚れなど有機物があると接触した時点で分解されるため、汚れを落としての使用を推奨。

B) [100 mg/L (ppm) (0.01%)] モノの表面・手すり等の消毒用途
 上記①で作成したストック溶液を水で5倍希釈。pHは6.5~7(弱酸性~中性)あたり。

C) [50 mg/L (ppm) (0.005%)] モノを流水で掛け流して消毒する用途
 上記①で作成したストック溶液を水で10倍希釈。
 ※塩素や重曹で肌が荒れる可能性はあります。敏感な方は使用しないか、注意してご使用ください。点眼・内服は絶対しないでください
 20200422_次亜塩素酸水溶液2種.jpg

【自作次亜塩素酸水の安定性・保存性検証(次亜塩素酸濃度&pH)】
 アルカリ性でない次亜塩素酸水は不安定で長期保存できないとの情報がネット上に多くあり、自作したものがどの程度保存できるか興味がありました。そのため、作成後に定期的に次亜塩素酸試験紙とpH試験紙で確認してみました。いずれも試験紙での検証のためばらつきはあると思いますが、目安になれば幸いです。
※作製32日後(アルミホイルによる遮光保管)まで確認。

 試験紙の目視では500 mg/Lストックは明らかな変化は確認できませんでしたが、32日では100 mg/Lの結果を考えたら若干低下しているかもとは思います。

 一方、100 mg/L希釈液では24~28日で50-100 mg/Lの間の色合い、32日で50 mg/L程度の色合いになっていました。そのため、希釈液の保管は3週間程度が目安かもしれません。
 pH試験紙も同時に確認していますが、大きな変化がないので間の画像は省略してます。

・500 mg/L ストック溶液(遮光保管)
500mgLストック32日.JPG
・100 mg/L 希釈溶液(モノの表面・手すり等消毒用、遮光保管)
100mgL希釈液32日.JPG
・参考:遮光なしでの溶液安定性
遮光なし24日.JPG
 光(紫外線)で実際に分解が早いのか気になったため、遮光なし(他の保管条件は遮光下と同じ)でどう変化するのかも確認してみました。
 500 mg/Lストック溶液で遮光なしでは、8日で明らかに次亜塩素酸の濃度が下がり、16日で200 mg/L前後、20日では50~100 mg/Lの間、24日では25 mg/L前後の色合いでした。

 また、100 mg/L希釈液の遮光なしだと、4日で3/4程度、8日で約半分、12日後で1/4程度、16日以降は検出下限以下の色合いでした。
 遮光なしだと明らかに分解が早かったので、保管にはアルミホイルを巻くなど遮光が必須と思います。遮光なしの保管の場合、作ってから3~4日で使い切るのが良さそうです。

【炭酸水による次亜塩素酸水作製の化学的背景】
 上記の炭酸水を使った次亜塩素酸水の作製方法の化学的背景についても知った上で使われることが必要と考えておりますので、私の(過去の?)化学知識の範囲内で記載したいと思います。

  o 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液の違いについて
 上記の炭酸水による次亜塩素酸ナトリウム水溶液の中和では、簡潔に記載すると以下の化学反応が起きています。
NaClO(次亜塩素酸ナトリウム)+H2CO3(炭酸)
     →HClO(次亜塩素酸)+NaHCO3(重曹)

 次亜塩素酸はpHに応じ溶液中の存在状態(平衡状態)が変化し、アルカリ性(pH 7より大)ではOCl- (NaClO)の割合が増大、酸性(pH 7未満)ではHClOの割合が増大します。
 酸乖離定数による理論上のHClO割合は、pH 4.5~6で95%以上、pH 6.5で約90%、pH 7で約75%、pH 7.5で約50%です。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を炭酸水で弱酸性~中性とすることで、HClOの割合を増大させるとともに、アルカリによる皮膚などへの刺激性を落とすことになります。

 NaClOとHClOでは、消毒強度も異なり、HClOの方がNaClOよりも強いことが知られています。そのため、ハイターとして知られるNaClO(次亜塩素酸ナトリウム)のモノの表面・手すり等へのコロナウィルス(COVID-19)やノロウィルスの消毒用途として、厚生労働省からのパンフレットで推奨されている希釈濃度(0.05%=500 mg/L (ppm))よりも低濃度(100 mg/L (ppm))で消毒用途として使えることになります。
20200626013-4.pdf (meti.go.jp)

  o 次亜塩素酸ナトリウム水溶液について
 今回用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、他の添加物を含んでいない製品を使いました。

 メジャーな漂白剤としては他に複数製品がありますが、それらには次亜塩素酸ナトリウムの安定性を上げるために水酸化ナトリウム(NaOH)を添加し、よりアルカリ性(pHを上げる)に傾けているものがあります。そのようなNaOHが含まれている漂白剤を使用された場合には、ストック溶液のpHがアルカリ性になっている可能性があるため、個人的には使用されないことを強くお薦めします(未検証)。

 次亜塩素酸ナトリウム水溶液もゆっくりと分解して濃度が低下します。特に、直射日光のあたる場所や高温での保管では分解が早く進むことが知られています。そのため、各製品生産時からの時間経過とともに濃度低下しますので、長期間経過している製品の場合には加える量を増やす必要はあるとは考えられます。

  o 中和について
 今回は炭酸水を用いて中和を行っていますが、中和反応の危険な例としては、漂白剤などの塩素を含む強アルカリ性溶液(漂白剤など)に強酸性溶液(清掃剤など)を直接混ぜてしまうことです。混ぜてしまうと、大量の塩素が空気中に発生し、健康を害するばかりか、特に密閉空間では命に関わりますため、絶対混ぜないようにしてください。

 今回用いた炭酸水も酸性溶液ですが、中程度の酸性(通常pH 4.5~5.5)のため、大量に加えてもそれ以上酸性に傾くことはなく、塩素が発生する可能性は殆ど無いとは考えられます。

 ただし、「中和」は使用する液体によって大変危険になる場合があるという事を理解いただいた上で、換気の良いところで作業されることをお薦めします。決して小さなお子さんの近くに漂白剤を置いておくことが無いよう、手の届かないところに置いて下さい。

  o 炭酸水について
 今回用いた炭酸水(ウィルキンソン)の濃度ですが、一般的な炭酸水中の炭酸濃度は製造後未開封で3,000~5,000 mg/L (ppm)あたりと考えられています。開封後、コップに注ぐだけで炭酸濃度は約1/3程度になるとも言われているため(どの程度減るのかの情報が少ないのですが、各種情報を確認してこの辺りが妥当かと)、次亜塩素酸ナトリウムと混合する状態での炭酸濃度は1,000~1,667 mg/L程度と想定されます。

 今回は開栓後すぐに用いることも踏まえ最も高い1,667 mg/Lを採用し、中和する次亜塩素酸ナトリウム(6%=60,000 mg/L=60 mg/mL、4.2 mL分には約250 mg含有→250 mg÷74.44=3.36 mmol)とモル比で等量となる炭酸水(3.36 mmol×62.03=208 mg→208 mg÷1,667 mg/L≒0.125 L=125 mL)を加えて中和しました。

 きちんと炭酸濃度を測定していないためブレはあるとは思われますが、混合後のストック溶液のpHを測定すると6前後であったため中和はきちんと行われていると考えられます。
 ※次亜塩素酸ナトリウムの分子量:74.44、炭酸の分子量:62.03

 なお、炭酸濃度が1,000 mg/Lとなっている場合(炭酸がやや抜けた場合)は、同様に計算すると208 mLになります。pHを確認しつつ、酸性になってない場合は必要に応じて炭酸水の量を増やしてください。加える炭酸量の不足でアルカリ性になることに比べたら、多少多めに加えても酸性にした方がリスクは小さいかと思います。

 ここまでくると、面倒だから全て炭酸水で希釈すれば?と思われる方もいらっしゃるとは思います。ただ、私個人としては少し気持ち悪く感じます。炭酸水は発泡性のため、消毒・殺菌作用がある液体(特に高濃度のもの)を発泡性が高い状態で保管すること、及び空気中に拡散する可能性がある状態で使用するのは、少しリスキーかなとは感じます。

  o 炭酸で次亜塩素酸水を作製する際の副産物について
 炭酸で中和する方法では副産物としてNaHCO3が生じます。この分子は実は重曹で、日常生活で調理や医薬品、入浴剤、清掃、消火剤などの多用途で一般的に使用されているものです。

・調理用:代表的には膨らし粉のベーキングパウダーがあり、25%が重曹です。
・医薬品:重曹溶液は弱アルカリ性(pH 8.2)であるため、胃酸中和剤として配合されています(3~5 g/日)。また口腔内の中和・口臭予防効果からうがい液としても使われます(4~6 g/L)。
・入浴剤:発砲剤としても配合されています。
・清掃用途:研磨・乳化効果があることから、洗剤もしくは補助剤として配合され、かつ脱臭効果から脱臭剤としても使用されます。

 本方法で生成される理論上の重曹濃度は次亜塩素酸水とほぼ同量(50~250 mg/L (ppm))のため、1回の噴霧量が1 mLとして10回噴霧しても10 mL。その時の重曹の量は0.5 mg(掛け流し消毒用)~2.5 mg(ゴミ箱等の消毒用)となり、食用や医薬品に比べ極微量と計算されます。

 以上、炭酸水と次亜塩素酸ナトリウムで次亜塩素酸水を作製する方法でした。皆様の一助となれば幸いです。

※2020夏以降では、店頭にエタノール(酒造メーカー製も含め)も戻っています。
 ただ、COVID-19対策はワクチンや特効薬が出るまで当面続くと思いますので、エタノールと次亜塩素酸水を用途に応じて使い分けようと思ってます(コストはエタノールのほうがかかるので、モノの表面消毒には次亜塩素酸水を使おうかと…)。
 また、ノロウィルスなどのエンベロープ(脂質二重膜)を持たないウィルスへのエタノールの効果は下がるので、そういう時期にもすぐに作れるので使えそうです。

【使用商品および関連品のAmazonリンク(炭酸水以外)】
ピューラックス(第二類医薬品扱い)
※別途、ピューラックスS(食品添加物扱い)あり。使用用途により適用される法規制、用法・用量が異なるため別製品だが、成分は次亜塩素酸ナトリウム6%で同一。
アズワン pH試験紙 ロールタイプpH1-14 /1-1254-02
共立理化学研究所 次亜塩素酸試験紙 高濃度 WAP-CLO(C) 50枚
日産化学工業 残留塩素試験紙 アクアチェックHC 100枚入



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D-boy

参考にさせて頂いております。
毎日、炭酸水を使った次亜塩素酸水を作っております。
しかし、最近厚生労働省から次亜塩素酸水について、効果はないとの発表がされたとの事ですが、macha-sanの御意見をお聞かせ頂けたらと思います。
正直、これが効果ないと言われたら、超高価なアルコールを大量に購入することになりますので、経済的に大変な事になります・・・。
by D-boy (2020-07-10 17:54) 

macha-san

D-boyさん
気づくのが大変遅くなってしまい、申し訳ありません_(. .)_
2020年当時はエタノールが入手困難でいろいろと情報がありましたね。次亜塩素酸水ですが、その後厚生労働省からもいろいろと情報は出されましたね。本記事で紹介したものは、「pHを調整した次亜塩素酸ナトリウム」という位置づけになると思います。

個人的には製造から保管に至るまできちんとすれば効果はあるとは思っていますが、ここで作製したものが実際に菌やウィルスに効くかどうかは検証実験をする必要があるとは思います。最終的には自己で判断して使うしかないかなと。微妙なコメントで恐縮ですが…コメントをありがとうございました!
by macha-san (2023-03-05 12:05) 

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